交通事故の加害者が謝罪に来ないのはなぜ?誠意を感じないときの対処法紹介

交通事故の加害者が謝罪しに来ないことはある?

誠意が感じられない加害者にはどう対応すればいい?

この記事は、あなたが抱える上記のような疑問を解決していきます。

結論として、事故の加害者には、被害者に謝罪しようとしない人もいます
その場合、加害者に謝罪を強要するのではなく、損害賠償請求刑事告訴などの形で対処することになります。

この記事では、加害者が謝罪しに来ない理由や、加害者に適切なペナルティを与える方法を解説しますので、参考にしてください。

【結論】加害者が謝罪に来なくても法的責任は負わせられる

交通事故に遭ってケガを負った場合、普通は運転していた加害者が、被害者のもとに謝罪に来るでしょう。
ですが、中には謝罪をせず、連絡しても応答してくれない加害者も一定数います

加害者が被害者に謝罪しない理由はいくつかあります。
被害者としては、謝罪に来ない加害者のことを非常識と思うでしょう。しかし、このような場合は、無理やり謝らせるよりも、損害賠償請求などの法的手段で解決するのが得策です。傷害などを負わされた場合は、刑事告訴も視野に入れてください。

加害者が被害者に謝罪しない理由

交通事故が発生した場合、加害者は被害者にお詫びを入れるのは普通です。では、加害者が謝りに来ないのはどういうケースでしょうか。ここからは、加害者が被害者に謝罪しない理由を解説します。

任意保険会社に対応を任せているから

加害者が任意保険に加入している場合、被害者は加害者側の任意保険会社と連絡を取り合い、損害賠償額の決定などについて話し合います。このとき、加害者は事故後のやり取りを保険会社に一任し、被害者と連絡を取ろうとしない場合があります。

また、保険会社側が、加害者本人に被害者と直接連絡を取らないように説明しているケースもあります。これは、当事者同士が接触することで何らかのトラブルが起こるのを防ぐためです。

このような事情から、加害者が任意保険会社に加入していると、被害者に謝罪をしないことがあります。

他の対応で忙しくて謝罪をする余裕がないから

交通事故が起きると、加害者側も様々な対応に追われるため、謝罪に来れないといったケースがあります。

例えば、加害者が任意保険に加入していない場合、加害者が事故後の対応を全てしなければなりません
もちろん、強制保険の自賠責保険には加入しているはずです。ですが、自賠責保険は、任意保険とは異なって示談代行などのサービスは取り扱っていません。そのため、事故後の対応で忙しく、被害者に謝罪をしないケースがあります。

また、任意保険会社に加入していない加害者は、支払い能力がない場合がほとんどです。そうなると、車両の修理代や治療費などを負担できず、損害賠償の話し合いから避けるために、被害者への謝罪を後回しにすることがあります。

他にも、加害者側もケガしていたり、警察の取り調べを受けたりしていると、加害者は自分のことだけで精一杯になっていることが予想されます。このように、加害者が他の対応に追われている場合は、被害者への謝罪を後回しにしたり、最終的には謝罪を忘れてしまったりすることがあります。

事故の対応に関わりたくないから

他人に重大なケガを負わせてしまうと、罪の意識から逃げようとするあまり、被害者に謝罪しない加害者もいます
中には、「謝っても罵倒されるかもしれない」「暴力を振るわれるかもしれない」と不安になり、頑なに被害者への接触を避ける加害者も少なくありません。
事故の対応に関わりたくないという思いから、謝罪という最低限向き合うべき責任からも逃げようとするのです。

自分は悪くないと思っているから

残念ながら、事故で他人を傷つけたにもかかわらず、中には事故の重大さを理解していない加害者もいます
もちろん、被害者に落ち度がある場合も少なくないでしょう。ですが、被害者側に責任を全てなすりつけて、全く反省しない加害者がいるのも事実です。
そのような加害者は、自分に全く非がないと思っていますので、被害者に謝罪することはないでしょう。それどころか、被害者に暴言を浴びせたり、平気で嘘の供述をしたりする場合もあります。

加害者に謝罪させることはできる?

事故に遭った被害者としては、加害者からお詫びの言葉をもらいたいものです。
では、加害者に謝罪を求めることはできるのでしょうか?

結論としては、謝罪してほしいという旨を伝えることはできますが、それを強要することはできません
加害者が被害者に謝罪するのは当たり前のことですが、謝罪の要求を肯定する法律上の根拠はありません。そのため、謝罪をするかどうかの判断は、当の本人に任せるしかないのです。

また、執拗に謝罪を要求すると、保険会社が加害者側に弁護士をつけてしまい、交渉で不利になるおそれもあります。したがって、加害者に無理やり謝らせようとしても、いい結果を招くことはありません

こういうケースでは、謝罪の有無に過度にこだわりすぎず、損害賠償請求や刑事告訴といった形で法律上の責任を負わせるようにしましょう

加害者が謝罪してくるケース

謝罪を一切しない加害者もいますが、反対に不自然なほど積極的に謝罪の連絡をしてくる加害者もいます。
では、加害者が積極的に謝罪に来るのはどういったケースなのでしょうか?詳しく解説します。

加害者に刑事責任が問われるとき

交通事故で他人を死傷させると、法令で定められている犯罪が成立する可能性があります。
交通事故で成立する犯罪には、過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法5条)、危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法2条以下)などがあり、刑事裁判で有罪判決を受けると、懲役刑や禁錮刑、罰金刑といった刑罰が科せられます

また、刑事罰を科せられると、検察庁が管理する前科調書にその旨が記載され、市区町村が管理する犯罪人名簿に一定期間掲載されます。
前科持ちと判明すると、就職が制限されるなど、今後の人生に大きな悪影響を及ぼすでしょう。

ただし、上記のような罪に問われるおそれがあっても、検察官が起訴しなければ、刑事裁判が開かれることはありません。そして、起訴・不起訴の判断は、当事者同士で示談が成立しているかも重要になります

つまり、事故の加害者は、早い段階で被害者との示談を成立させ、少しでも起訴される可能性を減らそうとします。そこで、害者に積極的な謝罪をすることで、示談成立の確率を上げようとするのです

賠償金額について話し合いたいとき

交通事故の加害者は、賠償金額の話し合いをするために積極的に謝罪してくることがあります。
ですが、加害者が任意保険会社に加入しているにもかかわらず、加害者本人に賠償金額の話を持ちかけられたら注意が必要です

いくら加害者が謝りにきたからといって、賠償金額の合意を求められたときは、一人で判断しないようにしてください。安易に相手の条件を了承してしまうと、後の示談交渉で不利な結果を招くおそれがあります。賠償金に関する話は軽率に了承せず、弁護士などの専門家に一度相談してみるのがおすすめです。

謝罪に来なければ慰謝料を増やせる?

加害者が謝罪しに来ないのは非常識な話です。では、謝罪がなかっことを理由に、慰謝料を増額させることはできるのでしょうか?詳しく解説します。

謝罪がないだけで慰謝料の増額は難しい

慰謝料とは、精神的苦痛を与えられたときに請求できる賠償金です。
交通事故の被害者は、ケガで入通院を強いられたときに、入通院慰謝料を請求できます。また、ケガが完治せずに後遺障害が残った場合は、後遺障害慰謝料についても併せて請求できます。

では、加害者が謝罪に来ないときは、慰謝料の増額請求はできるのでしょうか?
結論としては、お詫びがなかっただけで慰謝料増額させるのは非常に困難です。というのも、慰謝料が増額するのは事故態様が悪質なケースであり、謝罪がないだけでは事故態様が悪質であるといえないからです。

ただし、加害者の態度が極めて悪質な場合には、慰謝料を増額請求できる可能性があります。
具体的には、以下のようなケースが該当します。

  • 事故の証拠を隠滅しようとした
  • 実況見分調書に記載された証拠と矛盾する不合理な弁解をした
  • 加害者側に明らかな過失があるのに被害者に責任転嫁しようとした
  • 被害者に暴言を浴びせた


ただし、慰謝料の増額を主張するためには、被害者側が上記の事実を証明しなければなりません。
「言った」「言ってない」などの争いになった場合は、慰謝料の増額が認められない可能性もあるので注意しましょう。

事故態様が悪質なら慰謝料増額が見込める

謝罪がないだけで慰謝料の増額は見込めませんが、事故態様が悪質であれば話が変わってきます。
では、事故態様が悪質なケースとはどのようなものでしょうか?

ここにいう「悪質な事故」とは、単に加害者側の過失割合が被害者よりも大きいというものではありません。飲酒運転無免許運転信号無視著しいスピード違反ひき逃げなどがある事故のことを指します。

上記のような事実が確認できた場合には、慰謝料を増額請求できる可能性があります。

加害者に適切なペナルティを与える方法

加害者に不誠実な対応をされた場合、被害者はどういう対応をすれば良いのでしょうか?
ここからは、事故の加害者に適切なペナルティを与える方法を解説します。

示談に応じない

加害者に適切な罰を与えたいのであれば、安易に示談に応じるのは絶対にやめましょう

悪質なケースだと、事故現場で警察も呼ばずに、安い賠償金で示談を成立させようとする加害者もいます。他にも、事故の事実を勤務先に知られたくない、免許の取り消しを受けたくないなどの理由で、その場で示談の申し出を受けるケースもあるしょう。

交通事故の示談は、基本的には合意後に内容を変更することはできません。そのため、安易に示談に応じてしまうと、後から取り返しがつかないおそれがあります。例えば、事故から数日経って後遺障害が現れたときは、後遺障害に関する賠償金を請求できるようになるでしょう。ですが、何もわからないまま示談で合意してしまうと、本来請求できるはずの賠償金が受け取れなくなる可能性が高くなってしまうのです。

加害者に適切なペナルティを与えるためにも、すぐに示談に応じるのは絶対にやめてください。

民事訴訟を提起する

交通事故の損害賠償は、基本的には民事裁判を利用せず、示談交渉で解決することになります。
というのも、民事訴訟を提起すると時間や手間がかかってしまい、被害者側もかなりの労力を要するからです。

しかし、時間や手間がかかったとしても、民事訴訟を提起した方が良いケースもあります。
加害者に反省の色が見られない場合は、示談に応じずに民事訴訟を提起するのも一つの手でしょう

また、示談交渉では、相手方の保険会社は裁判で認められる金額よりも低い賠償金額を提示します。
なぜなら、任意保険会社は賠償金を負担する立場であり、できるだけ自社の支出を減らしたいと考えているからです。
このようなケースでは、民事訴訟を提起し、法廷で正しい主張をすることで、賠償金の大幅な増額にも期待できます。

刑事告訴する

反省しない加害者に刑罰を与えたいのであれば、刑事告訴をする必要があります。

刑事告訴とは、警察などの捜査機関に対して、加害者の処罰を求める意思表示のことです。
刑事告訴すれば、加害者に対する処罰感情が強いことを伝えられるため、加害者の処分が重くなる可能性が高くなるでしょう。

最終的には検察官が起訴・不起訴を判断し、刑事裁判を開くかどうかを決定します。検察官が起訴して刑事裁判を開き、裁判官によって有罪判決が下されると、加害者は法令に規定された刑罰を受けることになります。

刑事裁判に被害者参加する

殺人、傷害、危険運転致死のような故意の犯罪行為により人を死傷させた事件など、一定の刑事事件では、被害者参加制度が適用されます。この制度によって、被害者やその遺族が、刑事裁判に直接関与することが可能になります。

刑事事件の捜査段階では、被害者側に加害者の供述内容などが明かされる事はほとんどありません。
したがって、刑事裁判が開始するまでは、被害者側は加害者がどう供述しているかなどを知ることができないのです。

しかし、被害者参加をすれば、第一回公判期日の前に刑事記録を閲覧・謄写ができるようになります。
そのため、加害者が嘘の供述をしていたとしても、公判の段階で矛盾点を追及することが可能になります。

また、被害者参加によって、被害者本人が裁判官に処罰感情を直接訴えることもできます。
加害者が罪を認めているような場合では、検察官の立証は書類だけを裁判所に提出するケースが多いですが、被害者参加すれば被害者側のリアルな感情を裁判官に伝えられるでしょう

弁護士に相談する

交通事故による損害賠償は、ほとんどの方が初めて経験するものと思います。そのため、一般の方では、示談交渉や訴訟提起などの手続きを一人で進めるのは難しいでしょう。

そのような場合は、弁護士などの専門家に一度相談してみるのがおすすめです。
弁護士であれば、示談交渉や裁判手続きを全て代行してくれますし、弁護士基準という高額の基準で慰謝料を計算してくれます

交通事故で加害者の対応に誠意を感じらない場合は、一度交通事故に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

まとめ

交通事故を起こした加害者は、必ずしも被害者に謝罪するわけではありません
任意保険会社に対応を任せている、私的な理由で謝りたくないなどの理由で、被害者への接触を避ける場合があります。

被害者としては、自分を傷つけた加害者に対して謝罪を求めるのは当然と思われるでしょう。ですが、いくら被害者といえども、加害者に無理やり謝らせることはできません
後の示談交渉などを考えると、執拗に謝罪を求めることは控えるのが賢明です。

このようなケースでは、加害者に適切なペナルティを与えることに気持ちを切り替えていきましょう
被害者としては憤りを感じますが、損害賠償や刑事処分といった法的手段で加害者に責任を問うことが大切です。

公開日: 2024-01-22

更新日: 2024-01-22