交通事故で仕事はどのくらい休める?休業保証についても紹介
「交通事故で怪我しちゃったら、どれくらいの期間仕事休めるの?」
「怪我の治療で仕事ができない期間の収入が心配。補償とかあるのかな?」
この記事は、あなたが抱える上記のような疑問や悩みを解説します。
また、怪我の治療のために仕事を休む場合、基本的にはその間の収入を補償してもらえますが、それについても押さえておくべき知識があります。
そこで、この記事では交通事故で仕事を休む際の期間や、休業中の保証に関して押さえておくべき知識について解説します。
自身、または大切な人にもしものことがあったときのために、しっかり把握しておいてください。
【この記事で解決できる疑問】
■怪我の程度別に、交通事故後にどれくらいの期間仕事を休めるか
■休業損害の受け取り対象になる人・ならない人はどんな人か
■休業損害の金額はどのように計算されるのか
■休業損害はいつからいつまでの分をもらえるのか
■交通事故に遭って仕事を休む際は何に注意するべきか
【大前提】交通事故後に仕事を休む期間は医師との相談が必須
まず大前提として、交通事故で仕事を休むなら、その期間については医師との相談のうえ決めることが必須です。
交通事故後に仕事を休む期間は、怪我の治療に必要な期間と連動します。
怪我の治療に必要な期間は、医師が医学的な見解のもとに判断するものです。
自身の感覚や都合によって決められるものではないので注意してください。
【怪我の程度別】交通事故後に仕事を休む期間
交通事故によって怪我を負ってしまった場合、仕事を休むべき期間は怪我の程度によって大きく変動します。
例えば擦り傷と骨折では、治療にかかる期間が大きく違いますよね。
交通事故後に仕事を休む期間の目安を、怪我の程度別に解説します。
【交通事故後に仕事を休む期間】
■打撲などの軽症の場合
■むちうちの場合
■骨折の場合
打撲などの軽症の場合
打撲などの軽症の場合は、仕事を休む期間は2週間~1ヶ月ほどの期間となります。
怪我の程度に応じて期間は多少変動するので、医師との相談が必要です。
むちうちの場合
むちうちの治療にかかる期間は3ヶ月ほどになるのが一般的です。
重症の場合は半年ほどかかる場合もあります。
しかし、仕事を休む期間は保険会社が補償を認めてくれる期間のみです。
保険会社が補償を認めてくれる期間は、急性期~亜急性期の1ヶ月~2ヶ月ほどになることが多いようです。
むちうちの安静期を過ぎたら仕事に出て大丈夫?
交通事故に遭った直後は、急性の症状が出やすい期間です。
その期間を安静期といい、仕事を休むのは当然だといえます。
しかし安静期を過ぎ、日常生活に支障をきたすような症状がない場合も油断はできません。
以下のような要因で症状が悪化してしまう可能性もあるため、仕事に復帰できるかどうかは経過をみながら医師の判断を仰ぐ必要があります。
【安静期を過ぎてから症状を悪化させてしまう要因】
■車や電車、バスなどに乗っている最中に患部が動く
■パソコン作業など、長時間同じ体制をとり続け、首や背中に負荷がかかる
■会話中に相槌をうつことによって首に負荷がかる
安静期を過ぎてから仕事に復帰できるかどうかは、職種によっても変わってくるはずです。
仕事に復帰すること自体は認められても、長時間の労働は医師から止められる可能性もあります。
逆に、怪我に全く影響のないような職種なら復帰を認めてくれるケースもあるはずです。
骨折の場合
骨折の治療には、半年ほどの時間を要するのが一般的です。
よって、仕事を休む期間も半年ほどが目安になります。
骨癒合という、骨折の治療過程の最終段階に入れば仕事に復帰しても支障がない場合もあります。
治療の経過をみながら、医師による適切な判断に従ってください。
交通事故で仕事を休んでいる間は休業損害を受けとれる
交通事故によって長期間仕事を休む場合、当然その間の収入がなくなってしまうことを懸念するはずです。
しかし、交通事故で怪我を負ったことによって仕事を休まざるを得ない場合は、その間の収入を補償してくれる制度があります。
休業損害というその補償について、実は意外と知られていないことも多いのです。
詳しく解説していきます。
【休業損害について】
■休業損害とは
■休業損害と休業補償の違い
■休業損害を受けとるには医師の診断書が必須
■休業損害の受け取り対象になる人
■休業損害の受け取り対象にならない人
■休業損害が支払われる期間
■意外と知られていない、休業損害を受け取れるシチュエーション
休業損害とは
休業損害とは、交通事故で怪我を負ったことによって仕事を休まざるを得なくなった際の収入や減収を補償する制度のことです。
当然ですが、交通事故による怪我によって働けない期間ができてしまうと、収入が減るという損害を背負うことになります。
その損害は、交通事故がなかったら発生しなかった損害です。
よって、その損害に対する補償を加害者側に請求できます。
休業損害と休業補償の違い
休業損害と休業補償は、言葉が似ているため混同されがちです。
交通事故による損害を賠償するという点については共通していますが「誰が支払うのか」の部分に違いがあります。
休業損害は自賠責保険や任意保険会社から、休業補償は労災保険から支払われるものです。
休業損害を受けとるには医師の診断書が必須
休業損害は、医師の診断書がなければ請求できません。
「〇〇さんは交通事故で怪我を負ったことによって、これくらいの期間働けません」という事実を、医学的な見解のもと証明してもらえないと補償を受けとれないからです。
休業する必要がある主旨が記載されている診断書がないと、休業損害は受け取れないので注意しておきましょう。
休業損害の受け取り対象になる人
休業損害の受け取り対象になるのは、事故に遭う前から仕事をしているが事故に遭ったことによって収入がなくなる・もしくは減収になる人です。
必ずしも正社員である必要はありません。
【休業損害の受け取り対象になる人】
■会社員
■アルバイト
■自営業者・個人事業主
■主婦・主夫
主婦・主婦は、家事をしても収入があるわけではありません。
しかし、家事も価値のある仕事の一つです。
事故で怪我を負ったことで家事をできない状態であれば、休業損害を受け取れます。
休業損害の受け取り対象にならない人
逆に、休業損害の受け取り対象にならない人は仕事をしていない人です。
交通事故で怪我を負ったとはいえ、それによって仕事をできないという損害を受けたわけではありません。
また、学生の場合はアルバイトをしていて収入があれば休業損害を受けとれますが、学業に専念している場合は対象外となります。
休業損害が支払われる期間
休業損害が支払われる期間は「交通事故が発生した日」から「症状が完治した日、または症状固定となった日」までとするのが通常です。
ただし、症状が完治・症状固定となる前でも、医師から休業する必要はないと判断されたらそこから先は休業損害の対象外となるので注意しましょう。
意外と知られていない、休業損害を受け取れるシチュエーション
休業損害は、ただ仕事を休んでいる期間の損害を請求できるだけではありません。
意外と知られていませんが、交通事故で怪我を負ったことによって以下のシチュエーションとなった場合も休業損害を受け取れます。
【休業損害を受け取れるシチュエーション】
■失業した
■内定取り消しになった
■昇給や昇進が遅れた
■ボーナスが減った
■有給休暇を使った
■半休・残業カット・配置転換などで減給した
失業した
事故で怪我を負い長期間仕事を休んでしまったことによって、結果的に職を失ってしまうケースがあります。
その場合は、失業に対する補償を受け取れます。
休業補償の対象となる期間は、以下のどちらかになります。
【失業による休業損害の対象期間】
■失業してから次の職業に就くまでの期間
■失業してから次の職業に就くまでに必要と考えられる期間(なかなか次の職業に就けない場合)
次の仕事が決まらないからと、いつまでも補償を受けられるわけではないことは把握しておいてください。
また、以下の場合は基本的に失業による休業損害の対象外となります。
【失業による休業損害の対象外となるケース】
■仕事ができる状態まで回復しているのに、自主的に退職した
■会社から退職するよう促されて、自主的に退職した
ただし、後者の場合は会社からの退職勧奨の度合によっては会社都合として認められる場合もあります。
困ったときは、弁護士に相談するといいでしょう。
内定取り消しになった
交通事故で怪我を負ってしまったことで、決まっていた就職が内定取り消しになった場合は、それに対する休業損害を受け取れる可能性があります。
この場合、休業損害の対象となる期間は原則として「就職予定日から症状固定日」までの期間です。
昇給や昇進が遅れた
交通事故によって長期間仕事を休んだことにより、タイミングによっては予定していた昇給や昇進が遅れたり、できなくなったりすることもあるかもしれません。
この場合も、休業損害の対象となります。
ただし、この場合は会社側から「昇給や昇進が遅れた・できなくなったことを証明する書面」を作成してもらわなければなりません。
個人では対応が難しい場合もあるので、困ったときは弁護士に相談しましょう。
ボーナスが減った
怪我で仕事を休んだことにより、ボーナスを減額されることは十分考えられます。
この場合も休業損害の対象となるので把握しておきましょう。
ただし、昇給・昇進が遅れた場合と同様に「ボーナスの額がいくら減ったのか」を証明する「賞与減額証明書」を会社側に作成してもらう必要があります。
有給休暇を使った
怪我によって仕事を休むために有給休暇を使った場合も、実際には収入が減ったわけではありませんが休業損害の対象となります。
有給休暇は労働者に保証されている権利であり、怪我が原因でその権利を使ってしまったこと自体が損害だと捉えられるわけです。
ただし、会社の私傷病休暇制度を利用して休んだ場合は、減給がない限りは休業損害の対象外となるので注意してください。
私傷病休暇制度は各企業によって内容が異なるので、自社の制度を確認しておきましょう。
半休・残業カット・配置転換などで減給した
以下のケースも、それによって収入が減ってしまった場合は休業損害の対象となります。
【休業損害の対象となるケース】
■通院などの理由で半休をとった
■長時間労働を避けるために本来するべき残業をしなかった
■怪我による配置転換があった
配置転換によって減給となった場合は、その趣旨や理由を記載した書面を会社側に作成してもらう必要があります。
休業損害の計算方法
休業損害の金額の計算方法として、以下の3つがあります。
【休業損害の計算方法】
■自賠責基準の計算方法
■任意保険基準の計算方法
■弁護士基準の計算方法
自賠責基準の計算方法
自賠責基準は、自賠責保険が定める最低限の補償をおこなうための基準のことです。
【自賠責基準の1日あたりの補償額】
■令和2年3月31日までに発生した事故は5,700円
■令和2年4月1日以降に発生した事故は6,100円
【自賠責基準の計算方法】
■5,700円or 6,100円×休業日数
任意保険基準の計算方法
任意保険基準の計算方法は、各任意保険会社によって独自に定めています。
よって、その数値は一般公開はされていませんが、自賠責基準よりは高めの基準が設けられているはずです。
弁護士基準の計算方法
弁護士基準とは、過去の裁判事例をもとに算出された基準で裁判基準と呼ばれることもあります。
上記2つの基準よりも高く設定されており、1日当たりの補償額は当人の働き方によって変動します。
【弁護士基準の計算方法】
■会社員・アルバイトの場合
■自営業者・個人事業主の場合
■主夫・主婦の場合
会社員・アルバイトの場合
会社員やアルバイトなど、給与所得を得ている方の場合は、以下の2つの計算式のどちらかを使用して休業損害額を計算します。
【計算式】
■直近3ヶ月の給与合計額÷90日×休業日数(土日祝日を含む)
■直近3ヶ月の給与合計額÷稼働日数×休業日数(土日祝日を含む)
任意保険会社基準の場合は土日祝日を休業日数としてカウントしない場合もありますが、弁護士基準の場合は土日祝日も休業日数として含んで計算されます。
自営業者・個人事業主の場合
自営業者・個人事業主の場合は、会社員のように月々の収入が一定ではありません。
よって、交通事故が発生した前年度の所得額が基準となります。
【計算式】
■交通事故前年度の所得額÷365日×休業日数
主夫・主婦の場合
普段は収入を得ていない主夫・主婦の場合は、厚生労働省が発表している賃金センサスなどを元に休業損害を計算します。
【計算式】
■賃金センサスなどから算出された平均年収÷365日×休業日数
上記の計算式によって計算される1日当たりの休業損害は、およそ1万円ほどとなることが多いようです。
交通事故で仕事を休む際の注意点
最後に、交通事故で仕事を休む際の注意点をお伝えします。
【注意点】
■事故に遭ったらすぐに病院にいく
■医師と相談のうえ、適切な頻度で通院を続ける
■完治、または症状が固定するまで通院を続ける
■治療よりも仕事を優先すると補償を受けられない可能性がある
■勤務先の規定を確認しておく
事故に遭ったらすぐに病院にいく
交通事故に遭ったら、自覚症状の有無は問わずできるだけすぐに病院にいくことが大切です。
特にむちうちになってしまった場合は、事故直後は傷や痛みなどがなくても、後から症状がみえ始めることも多くあります。
できるだけ早く医師の診察を受けることで、適切な治療を施されて症状の軽減に繋がるはずです。
また、事故発生から病院にいくまでの日数が空きすぎると、怪我などの症状と交通事故の因果関係を疑われてしまうことがあるので注意が必要です。
怪我と事故の因果関係が証明されないと、休業損害を請求できません。
医師と相談のうえ、適切な頻度で通院を続ける
休業中の通院頻度があまりにも少ないと、休業の必要はないと判断されて休業損害の支払いを打ち止めされるケースがあります。
医師と相談したうえで、適度な頻度で通院を続けることが大切です。
もちろん、医師が通院の必要はないと判断した場合は問題ありません。
自身の判断で通院頻度を決めずに、必ず医師からの指示を仰いでください。
完治、または症状が固定するまで通院を続ける
休業損害は、怪我が完治、または症状が固定するまでの期間に対して支払われます。
それらの判断ができるのは医師のみであり、自己判断できるものではありません。
自身の判断で通院頻度を少なくしたり、通院を止めてしまったりすると休業損害の支払いを止められてしまう恐れがあります。
自身の身体のためにも、そして休業損害を受けとるためにも、完治・または症状が固定するまで通院を続けてください。
治療よりも仕事を優先すると補償を受けられない可能性がある
休業している間、職場の人手不足などの問題も発生するかもしれません。
しかし、いかなる事情でも治療より仕事を優先してしまうと、補償を受けられなくなる可能性が出てきます。
仮に、治療期間中に仕事をしたことによって症状が悪化してしまった場合、怪我と交通事故の因果関係を証明しにくくなってしまいます。
怪我が完治、または症状固定になるまではしっかり休養するようにしてください。
勤務先の規定を確認しておく
交通事故による怪我で仕事を休む場合は、提出する書類などが勤務先の規定によって定められているはずです。
自社に迷惑をかけないため、そして治療に専念するためにも勤務先の規定をあらかじめ確認しておきましょう。
まとめ
交通事故で怪我を負ってしまい、仕事を休む際の期間は症状によってさまざまです。
一般的には、打撲などの軽症の場合は2週間~1ヶ月ほど、むちうちの場合は3ヶ月~半年ほど、骨折の場合は半年ほどとなるのが目安です。
ただし、その期間は医師によって判断されるものであり、自身の感覚で判断できるものではないことを把握しておいてください。
また、交通事故による怪我で休業を強いられた場合は休業損害が支払われます。
単純に仕事を休んだ期間に対してだけでなく、以下のシチュエーションにおいても休業損害を受け取る対象となるので覚えておくといいでしょう。
【休業損害を受け取れるシチュエーション】
■失業した
■内定取り消しになった
■昇給や昇進が遅れた
■ボーナスが減った
■有給休暇を使った
■半休・残業カット・配置転換などで減給した
休業損害は会社員やアルバイト、自営業者だけではなく、主夫・主婦であっても受け取れるので安心してください。
無職の方や、学業に専念している学生の方は休業損害の対象外となるので注意しましょう。
休業損害の金額の計算方法には、以下の3つの基準があります。
【休業損害の計算方法】
■自賠責基準
■任意保険基準
■弁護士基準
ある程度の収入を得ている方の場合は、弁護士基準で算出した方がより適切な補償を受けられるはずです。
必要に応じて、弁護士への相談を視野に入れるといいでしょう。